この記事ではバンビジュエリーの鍛造(たんぞう)結婚指輪の強度とあわせて、鍛造(たんぞう)製法の特徴や、鋳造(ちゅうぞう)製法との違い、メリットとデメリット、鍛造(たんぞう)結婚指輪のつくり方などを紹介しています。
バンビジュエリーは、創業90年以上の時計バンドメーカー・バンビの、0.01㎜単位の高い精度と美しさが求められる、貴金属ベルトづくりの技術を活かし生まれた、日本の結婚指輪メーカーです。
60年以上にわたり、日本製の鍛造(たんぞう)の結婚指輪を国内の自社工場で、つくり続けています。
もくじ
- ・結婚指輪のつくり方には種類があるの?鍛造(たんぞう)製法と鋳造(ちゅうぞう)って??
- ・鍛造(たんぞう)製法と鋳造(ちゅうぞう)製法
- ・鍛造(たんぞう)と鋳造(ちゅうぞう)のメリットとデメリット
- ・鍛造(たんぞう)結婚指輪ができるまで
- ・鍛造(たんぞう)製法のカットリングとプレスリングに共通する工程
- ・鍛造(たんぞう)製法のカットリングとプレスリングで異なる工程
- ・鍛造(たんぞう)結婚指輪の強度について
- ・耐荷重試験とは?
- ・試験条件
- ・耐荷重試験結果
- ・まとめ
- ・運命の結婚指輪と出会えますように……
結婚指輪のつくり方には種類があるの?鍛造(たんぞう)製法と鋳造(ちゅうぞう)って??
鍛造(たんぞう)結婚指輪の強度を紹介する前に、結婚指輪の製法について、そして鍛造(たんぞう)とはどういった製法なのかを、それぞれ説明します。
一般的に指輪の製法には、大きく分けて2種類あります。
一つは鋳造(ちゅうぞう)製法 、そしてもう一つが鍛造(たんぞう)製法 です。
鍛造(たんぞう)製法と鋳造(ちゅうぞう)製法
鍛造(たんぞう)製法とは?
バンビジュエリーが結婚指輪をつくるために使用している鍛造(たんぞう)製法は、金属を加熱して叩くなどして圧力をかけ、鍛えながら成型する製法です。
金属には「叩く」、「延ばす」、「曲げる」など力を加えることでより硬くなる「加工硬化(かこうこうか)」という性質があります。
日本刀をつくる刀匠が金属をなんども叩いて圧力を加え、強靭な刀をつくりあげる方法も鍛造(たんぞう)製法です。
そのように金属を鍛える鍛造(たんぞう)製法でつくった指輪は、高い強度を持つ結婚指輪や婚約指輪になります。
その強度ゆえ、ダイヤモンドなどの宝石をセット(石留め)するのは、鋳造(ちゅうぞう)製法などでつくった、一般的なジュエリーより困難ですが、その分、ダイヤモンドが外れてしまう可能性が低くなります。
また、指輪表面のなめらかさも鍛造(たんぞう)製法の特徴の一つです。この表面のなめらかさが、着け心地の良さを向上してくれます。
バンビジュエリーの鍛造(たんぞう)結婚指輪は、日本国内の自社工場にある特別な専用設備で、大きな圧力をかけてつくっています。
そのため、より丈夫でゆがみにくく、傷が付きにくい、快適な指通りの結婚指輪に仕上がります。
またバンビジュエリーの鍛造(たんぞう)製法はさらに、「カット」と「プレス」の二つの種類があります。
鍛造(たんぞう)のカット製法の特徴
鍛造(たんぞう)のカット製法は、高い強度となめらかな着け心地のほかに、より精緻でシャープな形をつくり出す事が可能な鍛造(たんぞう)製法の一種です。
ベースとなる金属を削り出してデザインを表現する、贅沢な製法ともいえます。
鍛造(たんぞう)のプレス製法の特徴
鍛造(たんぞう)のプレス製法は、高い強度となめらかな着け心地のほかに、V字やウェーブラインなどの柔らかな曲線を描く形をつくり出せる鍛造(たんぞう)製法の一種です。
一般的に鍛造(たんぞう)製法は直線的なデザインが多いのですが、プレス製法では鋳造(ちゅうぞう)製法の指輪に近い曲線的なデザインも可能です。
また日本でプレス製法の結婚指輪をつくっている国内メーカーはめずらしい存在です。
鋳造(ちゅうぞう)製法(キャスト)とは?
鋳造(ちゅうぞう)製法は「キャスト」とも言われ、結婚指輪などに限らず、ペンダントやイヤリングなどをつくる際にもよく使用される一般的な製法です。
製作コストも比較的低いため、結婚指輪や婚約指輪だけではなくファッションジュエリーのほとんどが、鋳造(ちゅうぞう)製法でつくられています。
鋳造(ちゅうぞう)製法は、金属を高温で溶かし、液状になった状態で型に流し入れ、冷却して型から外した後に、研磨(ポリッシュ)や宝石の石留め(セット)を行います。
チョコレートをつくる際に、チョコレートを溶かし、型に流し込んで形をつくるという方法を思い浮かべてみると理解しやすいかと思います。
鍛造(たんぞう)と鋳造(ちゅうぞう)のメリットとデメリット
つくり方の異なる鍛造(たんぞう)製法と鋳造(ちゅうぞう)製法ですが、それらでつくられた結婚指輪のメリットとデメリットもそれぞれ異なります。
鍛造(たんぞう)結婚指輪のメリットとデメリット
鍛造(たんぞう)結婚指輪のメリット
- ・圧力を加えるため、金属の密度が高くなり、抜群の強度になる
- ・圧力を加える過程で、金属中の気泡が減少し、なめらかな着け心地になる
- ・ダイヤモンドが外れにくい
鍛造(たんぞう)結婚指輪のデメリット
- ・デザイン上の制約が一部ある
- ・製造に時間とコストがかかる
鋳造(ちゅうぞう)結婚指輪のメリットとデメリット
鋳造(ちゅうぞう)結婚指輪のメリット
- ・デザイン上の制約が少ない
- ・製造コストが低い
鋳造(ちゅうぞう)結婚指輪のデメリット
- ・圧力を加えていないため、金属の密度が鍛造と比べると低い
- ・型に金属を流し込む際に気泡が入るため、表面に凹凸や微細な穴ができやすい
以上のように、それぞれの製法にメリットとデメリットの両方があります。
鍛造(たんぞう)結婚指輪ができるまで
ここではバンビジュエリーの鍛造(たんぞう) の結婚指輪のつくり方をご説明いたします。
1930年創業の歴史を持つ老舗時計ベルトメーカーの、0.01㎜単位の高い精度、貴金属時計ベルトの美しい仕上げなどの、優れた加工技術をバックボーンに持ち、60年以上、国内で日本製の結婚指輪をつくり続けているバンビジュエリーの鍛造(たんぞう)製法は、鍛造専用の設備がある自社ファクトリー(工場)ならではのつくり方。
多くの方が想像する、手をつかってハンマーで叩いて鍛える鍛造(たんぞう)製法とは、少し違った方法ではないかと思います。
バンビジュエリーはさらに「カット」と「プレス」の二種類の鍛造(たんぞう)製法で結婚指輪をつくっているため、それぞれのつくり方をご紹介します。
鍛造(たんぞう)製法のカットリングとプレスリングに共通する工程
金属素材の下ごしらえ
鍛造(たんぞう)製法 は「鍛造(たんぞう)製法と鋳造(ちゅうぞう)製法」の項にあるように、金属を鍛(きた)えることによって、高い強度と美しさを持った指輪をつくる工法です。
この鍛える工程は、素材(金属)の下ごしらえの段階から始まっています。
金属に圧力をかける
まず特別な設備で高い圧力を加え、結婚指輪の材料となるプラチナや金などの貴金属合金をしっかりと鍛(きた)えます。
これは上のイラストのように、うどんを打つ際に生地をこねたり、踏んだりすることにより、麺にコシがでることをイメージすると分かりやすいかと思います。
金属も高い圧力をかけることにより強度が高まり、傷がつきにくく、丈夫で変形しづらい結婚指輪の素材になります。
この作業には金属の中の気泡を抜く効果もあり、出来上がる結婚指輪の表面もなめらかで美しい仕上がりになります。
板状に成型する
そのようにして鍛(きた)えた金属にさらに圧力をかけて延ばし、板状に成型します。
前述のように、金属には叩いたり、延ばしたりすることで硬くなる「加工硬化(かこうこうか)」という性質があります。
そのため、板状にすることにより、金属の強度がさらに高まります。
鍛造(たんぞう)製法のカットリングとプレスリングで異なる工程
鍛造(たんぞう)のカットリングを仕上げる
素材の下ごしらえを終えたあとは、いよいよ結婚指輪の形に仕上げていきます。
まずは「カット」から説明します。
1.結婚指輪の形をつくる
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Ⅰ, 下ごしらえを終え、板状に成型した金属材料をドーナツ型に抜く
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Ⅱ, Ⅰのドーナツ型の金属を起こして結婚指輪の形にする
カットリングは、このようにドーナツ型の金属からつくられているため、継ぎ目のないシームレスな仕上がりになり、抜群の強度の結婚指輪になります。
永遠に途切れることのない結婚指輪のため、結婚にぴったりな縁起の良さも人気の一つです。
2.表面のデザインを削り出す
1で結婚指輪の形になった金属から、ダイヤモンドでできた道具を使い、表面のデザインを削りだします。
この削りだされた模様を「カット柄」とバンビジュエリーでは呼んでいます。
画像では機械が自動的にやってくれるように見えますが、柄入れのタイミングや位置などは職人の技術が必要です。
カット柄のほかに、ミル打ち(※)も同様の方法で入れています。
機械と職人の技で入れるミルグレインは、とても精密で繊細な仕上がりです。
またカット柄を削り出すためには、出来上がりの大きさより、余分の金属が必要になります。
そのため贅沢な製法とも言えます。
3.仕上げのポリッシュ(研磨)
最後に結婚指輪の表面をなめらかに、美しく輝かせるために、仕上げのポリッシュ(研磨)をします。
日本国内でも数少ない、ゴールドの時計ベルトを作成できるバンビが培ったポリッシュの技術を応用して、この工程も、熟練の職人が行います。
マット仕上げなどのテクスチャーを施す場合も、綺麗な仕上がりにするために一度、ポリッシュをする必要があります。
特に結婚指輪の内側は、よりなめらかで着け心地が良くなるように細心の注意を払って仕上げています。
その後、丁寧にポリッシュをした表面を損なわないよう、慎重にダイヤモンドを表面にセット(石留め)します。
こうして出来上がった、カットリングは「鍛造(たんぞう)製法と鋳造(ちゅうぞう)製法」の「鍛造(たんぞう)製法とは?」の項で説明したように、
- ・高い強度
- ・精緻でシャープな形
- ・なめらかな着け心地
という特徴を持つ結婚指輪に仕上がります。
鍛造(たんぞう)のプレスリングを仕上げる
ここでは「プレス」の結婚指輪のつくり方を紹介します。カットとは、また少し異なる方法です。
1.結婚指輪の形をつくる
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Ⅰ,下ごしらえを終えた板状の金属から、結婚指輪を広げた形状を、プレス機を用いて大きな圧力(数十トン)で抜く
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Ⅱ,Ⅰの結婚指輪を広げた形状になった金属から、余分な部分を取り除く
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Ⅲ,Ⅱを叩いて曲げて指輪の形にする
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Ⅳ,継ぎ目を接合する
プレスリングは、一枚の板状の金属から指輪の形を打ち抜くため、よりデザイン性の高い鍛造(たんぞう)の結婚指輪をつくることが可能です。
また継ぎ目の接合は専用の特別な素材を用い、熟練の職人が行っているため、丈夫な結婚指輪に仕上がります
2.仕上げのポリッシュ(研磨)
カットリングと同じように最後に仕上げのポリッシュ(研磨)を職人が行います。
マット仕上げなどのテクスチャーを施す場合も同じく、どんな小さな面積であっても、綺麗な仕上がりにするために必ず、ポリッシュを行っています。
結婚指輪の内側も、接合部分に注意を払い、カットリングと同じく、なめらかな着け心地になるように繊細に仕上げています。
ダイヤモンドのセット(石留め)も、カットリング同様、ポリッシュ後に行います。美しい仕上げを損なわないよう、丁寧に作業していきます。
こうして出来上がった、プレスリングは「鍛造(たんぞう)製法と鋳造(ちゅうぞう)製法」の「鍛造(たんぞう)製法とは?」の項で説明したように、
- ・高い強度
- ・鍛造(たんぞう)製法では珍しい、デザイン性の高さ
- ・なめらかな着け心地
という特徴を持つ結婚指輪・婚約指輪に仕上がります。
このようにバンビジュエリーでは、現代的な機械設備と、人間の熟練の技を組み合わせて、丈夫で着け心地のよい鍛造(たんぞう)の結婚指輪・婚約指輪をおつくりしています。
これらは国内の自社工場でつくる、安心の日本製です。
鍛造(たんぞう)結婚指輪の強度について
この項では、バンビジュエリーの鍛造(たんぞう)の結婚指輪の変形に対する強さを、鍛造(たんぞう)結婚指輪と鋳造(ちゅうぞう)結婚指輪、両方の耐荷重試験(たいかじゅうしけん)の結果を元にご紹介します。
耐荷重試験とは?
耐荷重試験(たいかじゅうしけん)とは製品テストの一種です
今回は鍛造(たんぞう)と鋳造(ちゅうぞう)、それぞれの製法でつくった二つの結婚指輪に、上から力(重さ)を加えた場合、どれほど変形するかを計測し、強度を確認します。
また、耐荷重試験には専用の設備が必要です。そのため外部の工業試験場に依頼して試験を行っています。
【耐荷重試験のイメージ】
上図の【耐荷重試験のイメージ】のように、円形の結婚指輪に上から力を加えます。
すると、徐々に結婚指輪が歪むため、その距離から強度の目安がわかります。
「歪んだ距離」とは、「試験前の結婚指輪の内径」から「変形後の結婚指輪の内径」を引いた長さです。
試験前の結婚指輪の内径-変形後の結婚指輪の内径=歪んだ距離
となります。
この「歪んだ距離」が大きいほど、結婚指輪が押しつぶされた=変形したということになります。
さらにどの位の力を加えると、どの程度の変形が起こるかを確認するために、加える力を少しずつ大きくしていきます。
試験条件
前述のように、この耐荷重試験のために、鍛造(たんぞう)製法と鋳造(ちゅうぞう)製法、異なる製法でつくった同サイズ、同デザイン、同素材の結婚指輪を一本ずつ用意しました。
試験する結婚指輪の形
試験のために用意した結婚指輪は、製法以外はまったく同じ形と素材です。
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デザイン:甲丸
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幅:2.1mm
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厚さ:1.2mm
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内径:17.67mm(15号サイズ)
試験する結婚指輪の素材と製法
鍛造(たんぞう)結婚指輪、鋳造(ちゅうぞう)結婚指輪ともに、素材は高純度のPt950(プラチナ950)を使用しました。
1) 製法:鍛造(たんぞう)製法 素材:Pt950(プラチナ)
2) 製法:鋳造(ちゅうぞう)素材:Pt950(プラチナ)
鍛造(たんぞう)の結婚指輪は継ぎ目のないカットのもの(カットリング)を用意しました。
耐荷重試験結果
前述の二本の結婚指輪を用いておこなった、耐荷重試験の結果が以下です。
耐荷重試験結果グラフ
グラフの縦軸は「加える力の強さ」、横軸は「歪んだ距離」を表します。
※図中の「カット」は鍛造(たんぞう)の結婚指輪を、「キャスト」は鋳造(ちゅうぞう)の結婚指輪を示しています
鍛造(たんぞう)結婚指輪の耐荷重試験結果の解説
約10kgの力がかかる辺りから変形が始まりました。
10kgまでの変形は指輪に備わる、ばね性(※)によって自然にもとに戻る変形です。
鋳造(ちゅうぞう)結婚指輪の耐荷重試験結果の解説
約4kgの力がかかる辺りから変形が始まりました。
4kgまでの変形は指輪に備わる、ばね性(※)によって自然にもとに戻る変形です。
※ばね性…力を受けて一時的に変形している物体が、力が取り除かれると元に戻ろうとする性質。弾性。
上記の結果から、鍛造(たんぞう)製法の結婚指輪の強度は、鋳造(ちゅうぞう)製法の結婚指輪の約2.5倍ということが分かりました。
また、この強度は結婚指輪の形状や使用時の状況などの、さまざまな条件によって変化します。
厚み、幅によっては、より高い強度になる可能性が増します。
もちろん鍛造(たんぞう)が、丈夫な結婚指輪をつくることに適している製法といっても、強度には限界があります。
もともとジュエリーとは繊細なものです。鍛造(たんぞう)製法の結婚指輪は、一般的なジュエリーと比較すると丈夫ではありますが、ほかのジュエリーと同様に大切にあつかい、長い年月ご愛用いただきたいと思います。
まとめ
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☆鍛造(たんぞう)結婚指輪の強度は鋳造(ちゅうぞう)製法の約2.5倍※
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☆鍛造(たんぞう)結婚指輪は、丈夫さと着け心地に優れている
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☆鋳造(ちゅうぞう)結婚指輪は、デザイン性とコストパフォーマンスに優れている
※弊社製品の耐荷重試験結果による
運命の結婚指輪と出会えますように……
鍛造(たんぞう)製法の結婚指輪・婚約指輪は特別な設備も必要で、つくるための時間もかかります。
そのため鋳造(ちゅうぞう)製法の結婚指輪・婚約指輪のほうが、多く販売されています。
そして鍛造(たんぞう)製法自体、あまり一般的に知られていないのが現状です。
ですが結婚指輪というのは、毎日、そして一生、身につける特別で大切な指輪。
その結婚指輪が、
- ・丈夫であること
- ・なめらかで快適な着け心地であること
は、とても大切なことだとバンビジュエリーは考え、国内の自社工場で日本製の鍛造(たんぞう)の結婚指輪をつくり続けています。
鍛造(たんぞう)製法ならではの強度となめらかさ、鋳造(ちゅうぞう)製法ならではのデザイン性。
それぞれの特性を知って納得したうえで、自分にとって一番素敵な運命の「一生ものの結婚指輪」に皆さんが出会えることを祈っています。